第2章:501が【501】になっていく物語──XXから66へ向かう流れ

Fashion

どーも、捌零式です。ハロにちわ〜。

今回はいよいよ、ジーンズの王様とも言われるLevi’s 501が、どのように形を変え、時代をくぐり抜け、現在のヴィンテージ文化をつくっていったのか。その大きな流れをまとめていきます。

古着屋でもよく聞く「XX」「BIG E」「66前期」「66後期」というワード。 けれど、実際には年ごとに線を引けるような単純な話ではなく、工場差・時代背景・仕様変更のタイムラグが複雑に絡んでいます。

今回の第2章では、細かい縫製仕様やタイプ分けに踏み込みすぎず、まずは全体の流れをわかりやすくすることを目的にしています。 この流れを把握しておくことで、第3章以降で扱う内容が一気に理解しやすくなるはずです。

なぜ501の歴史を俯瞰で見る必要があるのか

ヴィンテージデニムの世界は、知れば知るほど底なしです。 赤タブの字体ひとつ、糸の色一本、ポケットの角度数ミリで議論ができるほど奥深い。

ただ、その奥深さに入る前に、まず知っておきたいのは、501の歴史は明確な境界線で区切れるものではないという事実です。

例えば1960年代前半から後半にかけては、BIG Eと66前期の特徴が入り混じる個体も存在します。 これは「仕様変更が年単位で一斉に切り替わったわけではない」からです。

工場ごとにパーツの在庫量が違い、地域によって流通のテンポがズレ、さらには縫製ラインにクセがある。 つまり、501の変化は連続的なグラデーションであって、白黒のスイッチではないんですね。

だからこそ今章では、細部に入る前に、まずは全体の流れを物語として捉えてほしいのです。

捌零式のスタンス:詳しい人は山ほどいる世界だからこそ

先に言っておくと、ヴィンテージデニムの世界には、僕より詳しい人は無限にいます。 縫製工場の変遷を体系的にまとめている人、生地の織り方を研究している人、赤耳の幅だけで文章が書ける人……。

だからここでは専門家向けの正解を語るのではなく、あくまで自分が理解しやすかった順番・見方・ポイントを、ブログとして残していく姿勢で書いています。

「要点はどこか」 「どこを押さえればXXと66の違いが見えるのか」 「全体像として理解しやすい順序はどれか」

こういう部分にフォーカスしたい。 そして個人的には、こういう理解の地図がいちばん文化として残るんじゃないかなと思っていますし、何より好きになる入口として理解しやすいんじゃないかと思います。

ただ、忘れてほしくないのはどこまでいってもファッションだという事。好きな服を着る喜びの一部として歴史があり、その歴史がまた古着を好きになるポイントだという点です。

その点を忘れない様にしながら、歴史を知る事でより501の魅力を再確認してもらえればと思います。

501という服が【文化】になるまで

501は単なるパンツではありません。 アメリカの産業、労働、移民、戦争、音楽、反抗、ファッション、その全部をくぐり抜けて形を変えてきた時代の記録です。

・鉱山で働く労働者 ・戦後のアメリカの再建 ・ヒッピーと反戦ムーブメント ・ハリウッド映画 ・ブラックカルチャー ・スケートカルチャー ・90sのストリートシーン

どの時代にも501が存在し、どの時代にも501を穿く理由があった。 だから【文化】と呼ばれるし、現代においてもなお価値が下がらない。

逆に言えば、501の歴史を知るということは、そのままアメリカの文化史を学ぶことにも繋がっています。

XXから66まで──文化としての501の変化を追う準備

これから扱う年代はざっくり次のとおりです。

  • ■ 1940年代〜50年代前半:XX 期
  • ■ 1950年代後半:両面タブ期
  • ■ 1960年代:BIG E 前期〜後期
  • ■ 1971年前後:eタブ移行
  • ■ 1973〜76年頃:66前期
  • ■ 1976〜80年代前半:66後期

この章では、まずこの流れを追っていきます。 細かい仕様の違い(Vステッチの残り方、ステッチ幅、ベルトループ位置など)は、次章以降で詳しく触れます。

次章への導入:XXという【始まりの形】へ

501というパンツが、最初に文化としての形を帯び始めるのはXX期からです。 戦後のアメリカ、復興の熱、労働者たちの生活、その全部がXXに刻まれています。

次のPartでは、まずはこの「XX」という最初の象徴から掘り下げていきます。

XX期という始まり──戦後のアメリカが生んだ荒々しい501

ここからはいよいよ具体的な年代に踏み込んでいきます。まず最初に語るべきは、1940年代〜1950年代前半に製造されていたXX期。今のヴィンテージデニム人気を支える象徴的な存在であり、同時に501というパンツの原風景とも言えるモデルです。

XX期の特徴を一言でまとめるなら、荒々しさ、ワイルドさ、素材の強さです。 綿糸の撚りが強く、インディゴの染めも深く、生地の表情がとにかく無骨。今のレプリカブランドが目指しているクラシックなデニムの味は、このXX期が源流になっています。

また、XX期の変化を語る上で忘れてはいけないのが、戦時中の物資統制。第二次世界大戦中は、リベット生産が制限されたために隠しリベットが廃止されたり、フロントボタンが簡素化されたりと、仕様がぐっと軽くなりました。

けれどその制限が逆に、戦中〜戦後のXXを特別な存在に押し上げたとも言えます。 クラシックでありながら荒削り。完成されていない感じが、逆に完成された魅力をもつ。それがXXです。

片面タブから両面タブへ──時代が整い始める転換点

1950年代に入ると、赤タブの表記が変化していきます。 まず現れるのが、片面タブ(片面のみLevi’s表記)です。これは戦後すぐの混乱期を象徴しており、工場によってタブ表記がまちまちだった時期の名残です。

そして1950年代後半に移ると、赤タブは両面表記へと切り替わります。 両面タブに入ると、縫製や仕様が少しずつ安定していき、いわば501が一本の商品として整っていく時代です。

・生地のムラが少し落ち着く ・縫製が丁寧になる ・色落ちが縦落ちへと向かう ・バックポケットの形が安定してくる

こういう変化が見られます。XX期の荒々しさから、より整った形へ。 まるで子どもから大人へ成長するみたいな、そんな過渡期が両面タブ期です。

この時期の501は、アメリカがようやく戦後復興を終え、経済成長へ向かって歩き始めた空気感をまとっています。ジーンズが労働着から若者文化へと広がる、その入口でもあります。

BIG Eの登場──501がファッションになる瞬間

1960年代に入ると、501は大きな節目を迎えます。それがBIG Eです。 赤タブにあるLevi’sのEが大文字で表記されていることからそう呼ばれていますが、この時期はデニム文化史の中でも特に輝いています。

  • ■ 赤タブのEが大文字
  • ■ フロントVステッチが残っている個体がある
  • ■ 生地のムラ感(縦落ち予備軍)が強い
  • ■ 60年代らしい少しスリムなシルエットが始まる

BIG Eの特徴は以下です。

また、BIG Eは音楽と映画の影響が非常に大きい年代でもあります。 エルヴィス・プレスリー、ジェームズ・ディーン、そして60年代カルチャー全体がジーンズをファッションの象徴へと押し上げていきました。

ファッションとしての501。 それが本格的に成立するのが、このBIG Eの時代です。

BIG E前期と後期──同じBIG Eでも別物

BIG Eとひとまとめにされがちですが、実際には前期と後期でかなり違いがあります。

■ BIG E前期(1960〜1966頃)

XXの名残が最も強く残るBIG E。 生地がまだ荒々しく、縫製にもムラがあります。 この時期の個体はヴィンテージ市場でも高額で、着た瞬間に60年代の空気がそのまままとわりつく感じがあるのが特徴。

例えば……

  • 生地が厚く、ゴワッとした感触
  • 縦落ちが強烈に出る
  • ポケットの形がまだ均一ではない
  • 縫製糸の色が工場ごとに違う

この荒さこそが魅力。

■ BIG E後期(1966〜1971頃)

一方で後期になると、だいぶ現代のジーンズに近づきます。

  • ■ 生地がややスムーズになる
  • ■ 縫製が安定する
  • ■ 耳(セルビッジ)の幅が揃ってくる
  • ■ ディテールが全体的に均一化する

ここから後の66前期・後期へと自然につながっていく流れが見えてきます。

BIG Eは、荒々しさと洗練が共存した不思議な年代。 そして、501という服が時代の象徴からスタンダードへと移行する橋渡しをしたモデルです。

eタブへの移行──1971年前後の混乱期

1971年の商標登録の関係で、赤タブのEが小文字へ移行します。 これにより、いわゆるBIG Eとeタブの境界が生まれるのですが……実際にはここが非常に分かりづらい。

理由は単純で、工場によってEとeタブの切り替え時期がバラバラだからです。 そのため、BIG E時代の仕様を持ちつつeタブが付く個体や、その逆も存在します。

この境界の曖昧さは、次の66前期・後期を理解する上で非常に大事になります。

つまり501の歴史は、きれいに区切れるものではなく、ゆっくりと重なり混ざり合いながら変わっていく連続性を持っているということです。

いよいよ66前期・後期へ

XXの荒々しさ、BIG Eのカルチャー感を経て、501はついに【現代のジーンズの原型】へ向かって進化します。

66前期と66後期。 この2つは、501を語る上で避けて通れない重要ポイントです。

ただし詳細は次のPartで扱いますので、ここでは軽く触れるだけに留めます。

次のPart では……

  • ■ 66前期のクラシック寄りの味
  • ■ 66後期の工業化された標準仕様
  • ■ 501というモデルが普遍化していく仕組み
  • ■ XX〜66が一本の線になる感覚

こういった部分を中心に掘り下げていきます。

では次へ進みましょう。

66前期という分岐点──クラシックとモダンが同居する501

XXとBIG Eの濃厚な余韻を引き継ぎつつ、501が現代ジーンズの姿へ向かって大きく踏み出した時期。それが66前期です。 では66前期とはどんなモデルなのか。私はこう捉えています。

アメリカの労働着から若者文化へ、そしてスタンダードへ──その移行期の空気が最も色濃く現れたモデル

66前期を理解する上で重要なのは、製造工程がまだ完全には安定していないという点です。BIG Eの名残を残しつつも、新しい仕様が混ざり始める。その曖昧さこそが魅力になっています。

■ 66前期の特徴

  • 生地の縦落ちが強く、ムラ感が残っている
  • 赤タブはe表記だがBIG Eの雰囲気が漂う
  • バックポケットのステッチに個体差がまだある
  • ベルトループの縫製に少し荒さが残る
  • シルエットがわずかに細身になり始める

66前期最大の魅力は、やはり生地の落ち方でしょう。 縦方向に強烈な色落ちが入り、太いチョークのようなラインが浮かび上がる。 これが、ジーンズ好きが66前期を特別視する理由のひとつです。

今の復刻デニムはこの66前期の落ち方を目指して作られているものが多く、ジーンズ文化における一種の基準になっています。

66後期──工業化された安定モデルの誕生

1970年代後半に入ると、アメリカのアパレル業界は本格的な工業化を進めます。 その波はLevi’sも例外ではなく、501の仕様は急速に安定していきます。

これが66後期です。

66後期は前期に比べて全体的に均一化が進み、工場ごとの個体差が減少します。 良く言えば安定、悪く言えば表情が薄くなる。 ただ、この安定感こそが、後の501を国民服レベルの存在へ押し上げた理由でもあります。

■ 66後期の特徴

  • 生地のムラが減り、均質な表情へ
  • 縦落ちより全体に均等な色落ちが進む
  • 縫製品質がほぼ統一される
  • シルエットが現代的なストレートに近づく
  • バックポケットが安定した形状になる

66後期を穿き込むと、縦落ちというより全体がじんわりとフェードしていくような落ち方になります。 これを地味と感じるか、長く付き合える味と捉えるかは人それぞれですが、私はこれをこれで好きです。

なぜなら、66後期はアメリカの量産文化の象徴でもあるからです。 すべてが効率的に設計され、工場のラインに乗せられ、世界中へ送り出される。 501が生活着として根付いたのは、この66後期の工業化があったからこそと言えます。

XXから66後期まで──一本の線でつながる物語

ここまでXX、BIG E、66前期、後期と見てきましたが、これらは単なる年代区分ではありません。 重要なのは、これらが一本の連続した線としてつながっていることです。

荒々しい素材の時代から、文化が花開く時代へ。そして工業化の時代へ。 501というパンツの歴史は、アメリカそのものの歴史とリンクしています。

■ 変化の流れを整理すると……

  • XX:素材主導の無骨な時代。アメリカの荒野がそのまま布になったような感覚。
  • BIG E前期:荒々しさと自由が最高潮に達した時代。若者文化の象徴。
  • BIG E後期:ジーンズが生活へ溶け込み始める。工業化の兆し。
  • 66前期:伝統と近代化の混在。クラシックとモダンの境界線。
  • 66後期:工業化の完成形。ジーンズが生活着として確立。

この流れを見ると、501というモデルはただ変化してきたのではなく、時代に合わせて最適化されてきた服だということが分かります。

だからこそ、XXだけが偉い、BIG Eだけが価値がある、66だけが味だ──という話にはならないわけです。

どれもが必要で、どれもが物語の一部。 私はこの全体の流れが好きなのです。

66前期と後期を見分けるポイント

さて、ここからは少し実用寄りの話も。 66前期と後期を見分ける際のチェックポイントを簡単にまとめておきます。

■ バックポケットのステッチ

前期は左右でわずかにズレが見られたり、ステッチ幅が不均一なものがある。 また、ポケット裏のステッチはシングルステッチ。後期はかなり安定し、左右対称に近づく。ポケット裏のステッチはチェーンステッチ。

■ 生地のムラ感

前期はムラが残り、縦落ちが強く出る。 後期は均質な生地で、淡いフェードが広がる。

■ 紙パッチ

紙パッチの質感は前期の方が紙が厚く、エイジングも荒い。 後期は薄くなり、製造コストを下げた印象がある。

■ 内股の縫製

前期は微妙に乱れがあることも。 後期はライン上の処理で整った形に。

ただ、これらはあくまでも傾向であり、必ず当てはまるものではありません。 私自身、これまでに触ってきた個体の印象に基づいており、もっと詳しい人ならさらに深く語ると思います。

ここがデニムの面白いところで、正解が一つではない世界なんですよね。

66後期は本当に価値が低いのか?

ここ数年、ヴィンテージ市場ではBIG Eや66前期に注目が集まり、66後期は相対的に評価されにくい傾向があります。人によりますが66は前期を66として、後期は後継モデルと同じ赤耳モデルとして扱う人もいます。

でも私はこう考えています。

66後期は価値が低いのではなく、実用品として優れていただけ

実際、66後期の個体は状態が良いものが非常に多い。 つまり、当時の人々にとって履きやすく、扱いやすかったという証拠です。

ファッション的価値だけでなく生活文化としてのジーンズを見る視点を持つと、後期の魅力がより深く理解できるようになります。

まとめ──501は時代を写す鏡

66前期と後期は、501の歴史の中でも特に人気が高く、語られることの多い年代です。 その理由は単純で、この時期の501が文化の変化と工業化の両方をまとっているから。

荒野の仕事着としてのXX。 若者文化の象徴としてのBIG E。 生活着としての66。

これらの連続性を理解することで、501という服がただのジーンズではなく、アメリカの縮図のような存在だと感じられるようになります。

そして次はいよいよ、第3章。 各年代のディテールをさらに深掘りし、歴史背景にある文化的要因、技術変遷、労働環境の変化などに触れていきます。

もう少しだけ、デニムの深い森を一緒に歩いてみましょう。

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